KyojiOhnoのブログ

作曲家、編曲家、ピアニストそして製作会社の経営者ですが、ここでは音楽以外の社会一般のことの雑感について書きます。

「確証バイアス」による「信じたい情報のみ信じる」ことでデマを信じ込む人たちーQアノン,ワクチン陰謀論,ウクライナ戦争

ロシアによるウクライナ侵攻が起きてからもうすぐ二か月になる。

ブチャを始めとするさまざまな虐殺のむごたらしい情報やウクライナ被害の悲惨な情報が入ってきているが同時にネットでは

「ブチャで虐殺など起きていない。フェイクニュースだ」

「今回の戦争ではロシアは悪くない、歴史的背景を見ると悪いのはウクライナの方だ」

ウクライナはネオナチスの国家である」

といった情報を信じ込む人間が、それこそウイルスのように日本国内でも増殖した。

元々昔からそうだが戦争というのは情報戦でもある。

これは戦国時代の武将ですらそうだ。

特にロシアは旧ソ連時代から情報操作はお家芸といってよく、相手を攻撃する理由を捏造して信用失墜を狙う「偽旗作戦」は得意である。これらの情報は一部のバイラルメディアを介してデマとして流され、それらの言質を鵜呑みにしている人達がSNSにも実に多い。普通に考えれば荒唐無稽でも「政府→国営メディア→親ロシアメディア→SNSの親ロシアアカウント」というふうに情報が拡散されると、勝手連的な陰謀論者やインフルエンサーなどの間で情報は増幅されてしまう。しかもたいていの場合は情報が一部変質することが多く、その結果、一定の信憑性が醸成される「デマの半信半疑化」が生じてしまい、「この情報こそが正しい情報である」と思い込み、「マスコミの情報は全てうそである」という風に思い込んでしまう。

 一度「正しいと思いこんだ情報」はそれを信じた人にとって事態の真偽とは無関係に「信じたい情報」となり、それ以外の情報はどんなに反証をみせても頭がうけつけなくなってしまう。

 一般的にはそれを「確証バイアス」という

だが主にバイラルメデイア系で流されている情報ー大部分はロシアの流す情報操作をSNSの親ロシアアカウントを通じて拡散されているが、それらの情報は殆どウクライナで実際に起きている現場からの情報ではない。次の実際ブチャに入ったジャーナリストの志波玲氏のレポートこそが比較的バイアスの少ない信頼に足る情報だと思う。なぜなら命がけで取材しているからだ。(しかも自費で)

www.tokyo-np.co.jp

だが例え志波さんのように自費で命がけで行ったにせよ(当然「スポンサーはこの場合ない」)「確証バイアス」にとらわれた人は「アメリカポチの情報」と決めつけるだろう。それほど「確証バイアス」にとらわれた人のマインドコントロールは堅く根が深いのである。

 

「確証バイアス」の罠に陥る人にほぼ共通する考えがある。それは

 

1.今の世の中は闇の「暗黒勢力」に支配されている。全てはそれの陰謀である、という陰謀論

2.マスコミの情報を信じるのはバカである。我々は誰も知らない「正しい情報を知っている」という優越感

3.マスコミが「悪」であるかのように報道している勢力こそ「暗黒勢力」に対抗する英雄であるという思いこみ

 

この3点を聞いて皆さんは何か思い当たらないだろうか?

そうトランプ前大統領を熱烈に支持していたQアノンの人たちの思考の構造である。

かれら多くはトランプが見えない「暗黒勢力」に立ち向かう英雄だと信じ(今でもトランプ支持者はそれを信じているらしい)トランプの支持低下やバイデンの大統領当選を「暗黒勢力による陰謀」と信じこんでしまった人たちだ。

こうしたデマに踊らされてしまった人たちは嘘に嘘を積み重ねる「嘘のミルフィーユ」戦略によって、すべてが虚偽と断定するにはあまりにも膨大な量であるがゆえに、完全にデタラメな話には思いづらくなる効果が起きてしまう。

かくしてそこそこ有名なネット論客でもそういったデマの「確証バイアス」が起きてしまい、いわば「デマの伝道師」となる

 

ここで面白いデータがある。東大大学院教授の分析結果だ。親露反ウクライナの投稿をリツイートしたアカウントの約9割が、過去に反新型コロナウイルスワクチン関連のツイートをリツイートしていたことが、東京大大学院の鳥海不二夫教授の分析で分かった。またリツイートしたアカウントの過去の投稿を分析したところ、「ウクライナ政府はネオナチ」という投稿をリツイートしたアカウントのうち、87・8%が反ワクチン関連、46・9%が米国の陰謀論集団「Qアノン」に関連する主張を過去にリツイートしていたこともわかったという。

www.sankei.com

この3種類のデマを信じ込む構造は見事なほど一致しているのだ。一度人間が「信じたい情報のみ信じる」といわゆる「確証バイアス」という状態に落ち入ると、カルト宗教にマインドコントロールされた状態と同じになる。

きつい例えかもしれないがトランプの時のQアノン,Jアノンの情報を信じ込む人、ワクチンの陰謀論をばらまく人、そして親ロシア反ウクライナの情報の「確証バイアス」でデマを信じ込む人たちはオウム真理教のようなカルト宗教にマインドコントロールされているのと同じ精神状況といっていい。これは極めて危険な状態である。

勿論、マスコミの情報を鵜呑みにするのは低いリテラシーの持ち主である。それは正しい。結論からいって特に高度情報化社会においてはバイアスがかかっていない情報など殆ど存在しないといっていい。

しかしマスメデイアの情報が信じられないからといって、その辺のネットの「もっともらしい情報」「信ぴょう性があるように感じる」情報を信じていいことにはならない。これは警察や自分の家族のいうことよりも、詐欺師のいうことが正しいと思いこむ状態と同じである。詐欺師はそうやって被害者をうまく騙すのである。

しかし「確証バイアス」は実にやっかいである。マインドコントロールを外すのと同じ状況だからである。しかもこの問題はかなり根が深い。

というのもそういった荒唐無稽な情報を信じ込む背景には現代社会に対する不信があるからである。

以下の記事がその現象をわかりやすく分析している。

withnews.jp

以下の記事の引用でこの記事を締める。上記の文章の結びに書いてある文章である。

社会への不信からフェイクを求める

政府に対する不信感が強く、現状に憤りや不満を抱えている人々も同様に動員される可能性が高まります。

現在の市場経済や民主制に上手く適合している富裕層やエリートなどといった階層への反発が蓄積しているほど、彼らがこぞって祭り上げる現実への拒絶が起きやすくなります。むしろそれらすべてを虚構の産物と嘲笑い、世界支配を目論む主犯が暴露され、懲罰される願望とも幻想ともつかない信念によって、自らの尊厳を手当てしようと企てずにはいられないからです。

先の映画が取り上げたような自分たちの生存を守るためにこそフェイクを切実に必要とする人々がいるとすれば、片や自分たちの実存問題を糊塗(こと)したいがためにフェイクを求めないではいられない人々がいるのです。

次第に足元がおぼつかなくなってゆくことが避けられないわたしたちの行く末を考えると、これらの象徴的な出来事はどこにでも訪れる暗黒の未来を示しているように思えなりません。

これは皮肉でも何でもなく、混じり気のないリアルなのです。

これらが本当の未来にならないことを願わずにはいられない

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