不況の原因は日本がマーケティングによる新市場開発を怠ったから
本日友人のマーケティング・アドバイザーの井上さんから興味深い記事を紹介してもらいました。
■「不況だからモノが売れないのか?」
http://ameblo.jp/researching-marketer/entry-11504570980.html
<前略>
ソニーも、シャープも、パナソニックも、かつてはそれぞれに特長をもって光り輝いていたメーカーでした。それが、今や、アップルや韓国勢におされ、青息吐息の状態です。
アップルや韓国勢の勢いの原動力になっている商品群は、本来、これまで、不振を極めてきた日本勢が開発していてもおかしくなかったものです。しかし、それが出来なかったのは、「選択と集中」の美名の下、まだ見えない市場にチャレンジすることを怠ったためだと私は思います。
「選択と集中」とはジャック・ウェルチが唱え、実行した理論で、1位と2位以外の事業からは撤退し、経営資源を集中するというものです。それ自体は非常に合理的な考え方です。
しかし、これを正しく実行するのは、高度成長期には容易でも、成熟期には難しいと思います。それは、プロダクトライフサイクルを考慮し、選択をする対象の中に「将来の事業」を含まなければ、停滞状態から脱し、成長することができないからです。つまり、既に市場ができているためにその順位が明らかになっているものの他に、将来的に1位となれる可能性をもった事業を見極めなければならないということです。
そうでないと、成長の可能性を持っているけれども、まだ売り上げ規模が小さく、揺籃期にあって、わずかなファクターで順位やシェアが大きく変動する市場の商品を、成長前に切り捨ててしまうことになります。最近、NHKで放映された[メイドインジャパン]という番組は、まさにそのような例をドラマ化したものでした。
もっと言いますと、まだ、世にそのようなコンセプトすら明らかになっていない「将来のスター」商品を、正しく見極めて、育てる必要があるはずです。
そして現実も、そのドラマのように、「選択と集中」や「成果主義」という言葉に踊らされたのか、曲解したのか、はたまた社内政治に都合よく利用したのか、目に見える事業への集中と目に見えない「将来事業」の切り捨てを行ってきたのではなかったでしょうか?
たとえば、スパコン事業や宇宙事業を切り捨てようとした民主党政権の事業仕分けというのは、その象徴的なものではなかったでしょうか?
そうではなくても、日本のマーケティングが新市場創造の可能性を見極める努力、力が足らなかった事は否めません。だからこそ、結果として新市場が創造できなかったのです。一方、新市場を創造した海外の電機メーカーは好調です。
つまり、この長年続く不況の責任の一端は、日本企業の「マーケティング」にあるということです。そして、その将来の方向性を指し示す役割を担う「マーケティングリサーチ」もA級戦犯であることは間違いありません。
もちろん幾多の例外もあることは事実ですし、自分としてもその中で奮闘してきたつもりではありますが、結果として多くの日本企業は浮揚しきれていない状態です。
不況の原因というのは、経済不安であるとか、消費意欲の低迷であるとか、様々なことが言われますが、人間の欲求というのはそれら全てを超越します。だからこそ、不況の後には好況が来るわけです。そして、その欲求を刺激するのは、新たな商品であり、サービスであるわけです。
つまり、不況だからモノが売れないのではなくて、欲しいモノやサービスがあまりないから不況が続くと考えるべきではないかと思うのです。
少なくとも、マーケティングにかかわる者はそう見るべきではないでしょうか。大きく見て不況の状態が20年も続いている日本では、その人間の欲求に応える努力が不足しているということです。
<後略>
すごく納得できる話です。
日本がなぜ最近閉塞しているかといいますと、過剰なまでの「成果主義」それと「絶対に失敗を容認しない企業風土」
この2つを両立することを要求している経団連をはじめとする大企業の経営者にも大きな問題があります。
マーケット開発、新市場開発には試行錯誤がつきものです。
しかし最近の高学歴、高偏差値のサラリーマン化した社長は
そういった試行錯誤を最近の大企業の経営者は容認しなくなりました。少なくとも容認しなくなったように外からは見えます。
むろん全部の会社がそうだとはいいませんが...
効率を第一とし、成果は出せ、だけど失敗は絶対にするな、
そういわれて会社をささえる新商品を生み出せるか、
むずかしいでしょうね。
なまじっか一部の新自由主義派のエコノミストにそういう方針が礼賛されているから余計にこの傾向が強くなっています。ーなぜか日本の経済界ではこういう人たちが異常なくらいに発言力があるのが不思議です。
私もかつて電気メーカーにいました。あの頃は試行錯誤はどんどんやって新たな技術を開発せよ、という雰囲気がありました。
しかし外からみていつのまにか日本の電気メーカーにそういう雰囲気を感じなくなりました。
そろそろそういう効率を第一とし、成果は出せ、だけど失敗は絶対にするな、という社員への指導方針
を見直してもいいころではないでしょうか?
なぜならその方針に固執したから新市場を開拓できなかった、のは火を見るより明らかですから
あまり新自由主義派、会社の効率やリストラを奨励するエコノミスト連中のいうことは聞かない方がよいと思います。彼らこそ日本社会を閉塞させ、長い不況の状態においやったA級戦犯といってもいいでしょうね。