TPPに関する大きな問題4-外交オンチの民主党新自由主義勢力
既に報道でご存じの通り、民主党内は既に「慎重派」(この表現もよくわからない表現だ)が多数派を占めた関係でTPP交渉参加表明会見は延期になった。
■野田首相のTPP交渉参加表明会見は11日に延期
http://www.asahi.com/politics/update/1110/TKY201111100337.html
だがこれが単なるジェスチュアに過ぎないことは明らかだ。野田佳彦という人物のTPPへの参加の意思はゆるぎないものと思われる。
これは内閣不信任案をかわす狙いもある、という情報もあるが、いずれにせよ参加表明を強行すれば党が分裂するだけでなく野田政権には次のようなリスクがある。
1.野田政権に対して内閣不信任案を突き付け、野田内閣を総辞職に追い込む (民主党議員に離反組が相当数出ると思われる)
2.野田佳彦氏を日本国憲法第99条=憲法擁護義務違反で訴える
3.国会でTPP交渉参加反対決議を行う
これらはいずれも現実に充分起こりうる事態だが、これだけのリスクを押してでも参加表明を強行する理由は一体何なのか?
正直わからない。
読売新聞のわざとらしい記事があるが、本当にこんなことが理由なのだろうか?
■TPP交渉参加表明へ…首相、有言実行アピール
http://bit.ly/vMP3iT
首相は9月の就任以来、安全運転で政権運営に当たると公言し、挙党態勢の構築に腐心してきた。その中で、党内に多数の慎重派を抱えるTPP交渉参加は「首相の最初の判断」(細野環境相)となった。
民主党政権はこれまで、鳩山元首相が沖縄県の米軍普天間飛行場の県外移設を掲げて迷走したり、菅前首相が消費税率の引き上げを訴えながら先送りしたりと、党内でも「言いっ放しで実現しないことの繰り返しの2年間」と自嘲する声が漏れるほどだった。それだけに、TPP参加表明が「有言実行」の形となることで、「米国からも経済界からも『野田首相は信頼できる』と評価され、政権が安定する」(首相周辺)と自賛する声が上がっている。
どのマスコミもそうだが取り分け読売とサンケイはTPPを推進派なのでそのまま信じるわけにはいかないが、もし理由がこれだと首相は国民よりはアメリカと財界しか見ていないということになる、
それともう1つ考えられるのは民主党政権の外交オンチぶりである。
民主党の外交オンチぶりは記憶に新しい尖閣諸島中国漁船衝突事件で既に立証済みだ。
「政治主導の内閣」といいながら実態は官僚まかせ、という状況が官僚のサボタージュを生み、当時の菅首相は醜態をさらした。特に外務官僚は他の省庁よりも変な意味でプライドが高いから、彼らのサボタージュは本当にロコツだった。
まあ民主党は初めて政権をとったのだから外交経験が浅いのはある程度仕方がない。しかしそれならそれで準備を普通以上にするべきだろう。
今回のTPPの取り組み方を見るとどうも尖閣諸島中国漁船衝突事件の教訓を学んでいるとは思えないのだ。
ラチェット規定やISD条項のリスクに対する認識も本当にわかっているのか疑問だ。そしてこれを強力に推進しようとするアメリカに対して本当に交渉能力があるとは思えない。野田首相は国会でのんきに「健康保険は維持する」などと発言しているが、ラチェット規定やISD条項はそれを許さない可能性が高いのだ。
別に小沢一郎を擁護する気などさらさらないが、このTPPのラチェット規定やISD条項がもたらすリスクを軽減するには小沢一郎のようなタフなナゴシエーターでないと到底太刀打ちできるものではない。野田首相は勿論、岡田や前原にもその能力があるとは思えない。
相手を甘く見ている。特に日本の財界も含めて国際金融資本勢力、と言われる連中を甘く見ているとしか思えない。だがアメリカ社会だけでなく世界をおかしな方向に進めているのが国際金融資本勢力なのだ。今の民主党政権が彼らに太刀打ちできるとは到底思えない。