KyojiOhnoのブログ

作曲家、編曲家、ピアニストそして製作会社の経営者ですが、ここでは音楽以外の社会一般のことの雑感について書きます。

いだてん総集編をみてー一年間見なかったことへの後悔が出てしまった。実に質の高いドラマであったー

今年の大河ドラマ「いだてん」

白状するが私も今年は全く見なかった。

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過去最低の視聴率といわれ、「あまちゃん」で一世を風靡した宮藤官九郎をもってしても視聴率の回復がなく、残念ながら史上最低の視聴率となってしまった。

私が「いだてん」を見なかった理由の1つは来年の東京オリンピック開催に関して1964年のオリンピックを描くことで、「オリンピック神話」を美化し、視聴者をとおして国民の国威掲揚を図ろうという政治的意図があったのではないか、という邪推が働いたこともある。

最近のNHKは安倍政権の広報放送という色合いを非常に強く感じる(特に政治部)そのため少なくともこのドラマの企画段階ではそれに近い意図があったのではないか、とも思ったのである。

だが取りあえず最終回だけでも見ようと思ってみたらそれらは本当に邪推以外の何物でもなかった、と思った。

まずあれだけ低視聴率といわれながら、ドラマとしてのクオリティは実にすばらしかった。最後は感動的だったし、ドラマの作り方もいかにも宮藤官九郎らしいテイストの演出になっていたのである。

そして本日総集編を見た。私の先入観が単なる邪推に過ぎなかったことを確信した。

仮に当初、このドラマの企画プロットを押した勢力が安倍政権や日本会議勢力の息のかかった人物だったとしても、関東大震災、5・15事件、2・26事件、ベルリンオリンピックの描き方、そして日本の戦時中の描き方、そのどれをとっても日本の戦前や軍国主義を美化するものは全くなかったし、きちんと悲劇として描いていた。特に2・26事件の首謀者の兵隊や当時日本の同盟国だったナチスドイツ等はかなりネガテイブに描いていたといっていい。これだけでも仮に安倍政権や日本会議勢力の意図があったとしても明らかにそれらに反するものであろう。仮にそういう意図が本当にあったとしたらそれらは完全な失敗に終わったといっていい。

そして宮藤官九郎はやはりドラマを作るツボを心得ている。総集編でしかみていないがどれもドラマとして感動的に描いている。何よりも政治家とか当時の日本のトップの人間の視点ではなく、きちんとした庶民からの眼で描いている(ここが大事なポイントだ)

ではなぜこんなに低視聴率にあえいだのか

その辺りを分析した記事がいくつかある

webronza.asahi.com

toyokeizai.net

blogos.com

この3つの分析を総合すると

1.いわゆる「大河ドラマスタイル」(歴史上の人物が主役でそれ中心にストーリーが展開する)でないこと(近現代モノはウケない)

2.二つの時代は1900~1930年代、1930~1960年代を描くというわかり辛さ

3.歴史上の有名人物がいない

という点かもしれない。特に大河ファンには高齢者が多く、ストーリーに様々な伏線をしかけたりする宮藤官九郎のスタイルについていけなかったという指摘も多い。

しかし一方で熱烈なファンも大勢いた。そしてそのファンの満足度は非常に高かった。一回しか見ていなかった私ですらこのドラマの感動的な演出に酔いしれた。

www.excite.co.jp

NHK大河ドラマは他の番組と違い、トータルするとハリウッド映画なみの予算をかけ、それを舞台とした様々な地域との間である種の「利権」が発生する。そのためNHKの一般的な番組と違い、視聴率というのも大きなファクターとなる、

それはわかるが、それでも「視聴率」と私は言い過ぎるような気もする、

そして実際視聴率とドラマのクオリティは反比例することが多い、私が大河ドラマ史上最低の駄作と考える「天地人」や「花燃ゆ」などは平均視聴率が「いだてん」の倍である。つまり視聴率が高い、という点と「ドラマが面白い」は無関係とまでいってよい

「いだてん」は確かに主役は歴史上有名な人物ではない、

それでも人見絹枝古橋広之進、といった有名アスリートを始め、犬養毅高橋是清河野一郎といった近代で活躍した歴史上の人物は登場した。

私自身は「勝手な邪推」によって面白いドラマを楽しむことを自ら放棄したことを後悔するものである。

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