KyojiOhnoのブログ

作曲家、編曲家、ピアニストそして製作会社の経営者ですが、ここでは音楽以外の社会一般のことの雑感について書きます。

大谷投手が肘の靭帯手術(トミージョン手術)-そもそもトミージョン手術とは

今年からロサンジェレス エンジェルスに所属した大谷翔平選手はかねてから肘の靱帯損傷が判明していたが、本日シーズン終了後に右肘内側側副靱帯(じんたい)の再建術(トミー・ジョン手術)を行うことが決まった

■トミー・ジョン手術へ…大谷4番で適時打/詳細

www.nikkansports.com

二刀流にこだわる大谷選手としても現行では殆どピッチングができない状況のため非情に残念ではあるがやむを得ないと考える。

メジャーリーグをある程度見ている人は「トミージョン手術」というとある程度わかるが日本ではあまり聞かない人が多いと思うので解説する、そもそもこの「トミージョン」とは、よく勘違いする人がいるが手術した執刀医の名前ではなく、最初にこの靭帯再建手術を受けた投手の名前である。

f:id:KyojiOhno:20180926155733j:plain
トミージョン投手(ドジャース時代)

メジャーリーグで通算288勝した大投手といっていいトマス・エドワード・ジョン・ジュニア投手で主にホワイトソックスドジャース、エンジェルス、ヤンキースでプレーした選手で

MLBオールスターゲーム選出 4回:1968年, 1977年, 1978年, 1979年
最高勝率2回:1973年, 1974年
実働年数:26年(歴代3位タイ)
通算勝利数:288勝(歴代26位, 左腕投手では歴代7位)

といった堂々たる成績を残した大投手といっていい。

大投手なのに自分が最初に受けた手術の方で名前が残ってしまうという何とも皮肉な話である。

このトミージョン投手が1974年7月17日のモントリオール・エクスポズ戦で、左肘の腱を断裂する大怪我を負う。マウンドから一目散にベンチに駆け戻り、当初選手生命はおろか、日常生活にも支障を来しかねないほどの大怪我と診断され、再起は絶望視されたが、当時ドジャースのチームドクターだったフランク・ジョーブ博士が考案した、損傷した靱帯を切除し他の正常な腱の一部を移植するという手術を受ける。

 

f:id:KyojiOhno:20180926160506j:plain

損傷した靱帯を切除したうえで、患者の反対側の前腕下腿、臀部、膝蓋腱などから正常な腱の一部を摘出し移植することで患部の修復を図る。移植した腱が靱帯として患部に定着するまでには時間がかかるため、術後には長期に渡るリハビリを行う必要がある。まず、おおよそ2か月をかけてひじの可動域を元に戻していくトレーニングを行い、日常生活において支障なく腕を動かせるようにした後、軽めのウェイト・トレーニングを開始する。徐々にウェイトの量を増やしていくのと並行し、腕全体を強化するための様々なトレーニングを始め、日常生活や通常の運動ができるまでに回復したと判断された時点で投球を再開することになる。通常、ここまでの回復に約7か月を要するため、実戦復帰には12か月から15か月が必要とされている。個人差はあるが一般的には術後18か月で故障前と同レベルの投球ができるようになると考えられている。

しかも実戦復帰後も球団によって厳しく球数を制限されるため、完全復帰は翌シーズン以降になる。3シーズン目にようやく完全復帰、復調する投手も少なくない

ちなみに日本人で初めてこの手術を受けたのがロッテの村田兆治投手だ。その成功をみて荒木大輔投手を始め多くの日本人ピッチャーがトミージョン手術を受けるようになった。

大谷投手のピッチングが見られるのは早くて再来年のシーズンの後半、場合によってはさらに一年後でないとみられなくなる可能性がある。

このトミージョン手術を受ける投手は1980年ー2000年代前半から急増し、1996年と2012年を比較するとちょうど8倍に増えているという。この原因についてMLBメジャーリーグ機構)は調査中だが、私見では球速が増加傾向にあり、中でも平均球速と最高球速の差が小さい若手投手がトミージョン手術を受けるケースが多いと思う。

トミージョン手術を受ける投手は一般に速球派投手が多いといわれる。確かに私は昔のメジャーリーグの投手の急速を見ても現在のメジャーの投手の球速は早いと感じている。昔は150キロ投げればかなりスピードボールのピッチャーと思われたが、今メジャーでは150キロ投げる投手などザラである。140キロ後半までだと「遅い」といわれるくらいだ。現在メジャーリーグでいわれる"Hard thrower"(球速が早いピッチャー)というと160キロ周辺を投げるピッチャーのことをいう。大谷投手も160キロなげるが、現在160キロかそれに近い速度を投げるピッチャーでないと"Hard thrower"といわれない傾向がある。そうした背景もトミージョン手術が増えている原因になっているのではないか、といわれる。

ただ1960-80年代初頭には当時"Hard thrower"といわれたステイーブカールトン(主にフィリーズ)そして”火の玉ーRyan Express"といわれたノーラン ライアン(エンジェルス、アストロス、レンジャース)そしてミラクルメッツの立役者のトム シーバー〈メッツ、レッズ) いずれもその時代を代表する速球派投手だが、トミージョン手術をしていない。彼らの調整法に何か学ぶものがあるのではないかとも思う。

トミージョンの成功率は技術の進歩もあって上がってはいるものの、最低でも2シーズンは棒に振るほどの負担の大きい手術でもある。メジャーリーグ機構として、日本のプロ野球としてもトミージョン手術を防ぐ、トレーニング方法や投球フォームのチェック等の研究をするように望むものである