KyojiOhnoのブログ

作曲家、編曲家、ピアニストそして製作会社の経営者ですが、ここでは音楽以外の社会一般のことの雑感について書きます。

天皇陛下「生前退位」で改憲が必要であるかのようなデマを流した産経

一か月ぶりの更新

正直参院選以降日記を更新しようという意欲が出なくなった。投票率が前回の参議院選より上がったとはいえ(前々回が低すぎたのだが)まだ52%の低水準、そして何よりもこの国の「民意」に対して絶望を禁じ得なかったからである。

だが一昨日の天皇陛下の「お気持ち」で安部政権が押し進める改憲の動きに事実上の「待った」がかけられた。

天皇が政治に対して発言するのは禁じられている中で安部政権の改憲ーとりわけ日本国憲法を事実上明治憲法に戻すという動きに対して。私には精一杯の「抵抗」を示されたと感じている。
海外では「皇帝」−Emperorーと呼ばれる天皇が選挙で選ばれた(はず)の安倍首相を始め自民党議員より、国民のことを考え平和憲法を愛しリベラルなお考えを持っているということが何とも皮肉としかいいようがない

生前退位皇室典範の改正が必要になるが、皇室典範改憲を始め他の議題より優先されるため、安倍晋三が目論む明治憲法に向けた改憲は後退を余儀なくされる。

これに関して先日産経ーFNNが国民に対して印象を誤った印象を与えかねない世論調査を行った。

天皇陛下生前退位「制度改正急ぐべき」70・7% 「必要なら憲法改正してもよい」84・7%
http://www.sankei.com/life/news/160808/lif1608080015-n1.html

さて天皇陛下の「生前退位」で本当に改憲が必要なのか?
日本国憲法の条文をみてみるとわかる

第1章天皇

第1条(天皇の地位、国民主権
天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
第2条(皇位の継承)
皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
第3条(国事行為に関する内閣の助言と承認)
天皇の国事に関する全ての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負う。
第4条(天皇の権能の限界、国事行為の委任)
天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しない。
天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
第5条(摂政
皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行う。この場合には、前条第1項の規定を準用する。
第6条(天皇の任命権)
天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
第7条(国事行為)
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行う。
憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
衆議院を解散すること。
国会議員の総選挙の施行を公示すること。
国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
大赦、特赦、減刑刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行うこと。
第8条(皇室の財産授受)
皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与(しよ)することは、国会の議決に基かなくてはならない。

日本国憲法天皇に関して規定しているのは以上である。
第一章第一条が「象徴天皇」としてのありかたを規定し、「生前退位」に関係すると思われる「皇位の継承」は第一章第二条である

これ以外には日本国憲法天皇に関して一切言及していない

にも関わらず産経FNNの世論調査天皇陛下の「生前退位」に関してはあたかも「憲法改正」が必要であるかのような世論調査をしている。全く知らない人は「生前退位のためには改憲が必要」という印象を間違いなくもつであろう。

これに関して非政府団体(NGO)である日本報道検証機構はやはり産経グループの今回の世論調査が不適切であると断じている。

http://person.news.yahoo.co.jp/yanaihitofumi/comments/posts/14707361067561.a1b9.20959/

日本国憲法が規定している皇位継承の要件は、「世襲」と「国会の議決した皇室典範の定め」の2つだけ(第2条)。「世襲」は逝去(崩御)を前提としない概念。憲法の基本書でも、「世襲」とは「その地位につく資格が現に天皇の地位に在る人の血統に属するものに限定されること」と説明されており、異なる学説はみられない(野中俊彦ほか編著『憲法1』第4版、有斐閣)。園部逸夫(元最高裁判事)著『皇室法概論』(第一法規出版)にも、「退位」を実現するには皇室典範改正か特別立法が必要とされているのみである。政府見解も憲法改正不要説である。

よって、産経・FNNが実施した世論調査の「今後、天皇の『生前退位』が可能となるように憲法を改正してよいと思うか」という質問は、生前退位を可能とするには憲法改正が必要」という誤解を与えるおそれがあり、明らかに不適切。

全く同感である。

この世論調査は何らかの恣意的な意図があったと受け取られても仕方がないだろう。明らかな誘導質問であり、あえていうがデマを流しているのと同じである。世論調査で世論操作をしようという下心がある、と解釈されても仕方あるまい。

これはBPOに報告してもいい世論調査ではないかと考える。
それにしても「報道検証機構」の誤報の報告で産経はもはや常連になっている。あえていわせてもらうがマスコミ人として恥を知らない報道機関といわれても仕方がない

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