KyojiOhnoのブログ

作曲家、編曲家、ピアニストそして製作会社の経営者ですが、ここでは音楽以外の社会一般のことの雑感について書きます。

民意を反映できない日本の政治システムーNewsweekを読んで

昨日問題の多い「特定秘密保護法」が公布された。
内容がずさんで議論が尽くされたとは到底言い難いこの法をすべて強行採決で勧めた政府与党の民主主義を否定する暴挙に私は断固抗議し、この法案廃止を唱える政党を支持するものである。


先日時事通信が発表した世論調査で安倍政権の支持率が大幅に低下(10ポイント近く減ー図)、と書いてあるが私に言わせればこの程度しか落ちなかったのか、という感想だ。「正月もすぎればどうせ忘れるさ」などと国民を徹底的に馬鹿にしている自民党幹部がいるようだが、忘れさせてなるものか、と思う(こういう言動も石破はテロというんだろうな

まあ政府は共謀罪の法案の再検討にも着手したようで、これでどんどん日本が警察国家公安警察はゲシュタボ(秘密警察)への道に進むのが安倍政権と石破の目標だが、それにしてもあれだけ国民がNO! といっている法案やパブリックコメントを徹底無視しておきながら

「今後とも懸念を払拭(ふっしょく)すべく、丁寧に説明していきたい」

などと述べ、
審議が不十分だったとの指摘に対し、

「真摯(しんし)に受け止めなければならない。もっと時間を取って説明すべきだったと反省している」

と安倍首相がいっても何をしらじらしいことを抜かすか、と感じるのが自然であろう

だがこのような安倍政権のようなファシスト的体質を持った政権だけでなく民主党の野田政権でも同じようなことがあった。野田が推進しようとしていたTPPもそうだし、消費税増税もそうである。

前置きが長くなったがそんな折、NEWSWEEKが日本の政治のシステムに関して面白い指摘をしていたのでここに紹介、引用させていただく。
記事全文はこちらを参照されたい。

■日本の民主主義はどうして「順序が逆」なのか?
http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2013/12/post-610.php

特定秘密保護法案が可決されました。私は、事実上与党単独での採決がされたということよりも、以前は使われていた強行採決という言葉を使うべきところを、「採決の強行」もしくは「採決強行」と言い換えることで「ニュアンスを弱めた」というメディアの姿勢に違和感を覚えました。
それはともかく、もっと違和感を覚えさせるのは民主主義の実質的なプロセスと言って良い「世論とのコミュニケーション」が「可決前」ではなく「可決後」に行われている、つまり「順序が逆」ということです。
<中略>
 可決後に動き出したということでは、メディアもほとんど同じです。NHKや共同通信などは法案成立後の12月9日になって世論調査結果を発表し、首相の支持率が低下したとか、法律への懸念があるという報道を繰り広げています。例えば共同通信は「8、9両日に実施した全国緊急電話世論調査」に基づいて『秘密法「修正・廃止を」が82% 内閣支持率急落47%』という記事を配信しています。

 法案賛成の側も同じです。産経新聞(電子版)は、法案の実務的な内容と東アジアの政治情勢を結びつけた「秘密保護法成立 適正運用で国の安全保て 知る権利との両立忘れるな」という分かりやすい記事を「主張」欄に掲載していました。保守の視点は明確で、論点の整理された記事ですが、これも可決成立後なのです。

マスコミのこの法律に対する対応は全くそのとおり、そもそも誰がみても欠陥だらけの法律を本来ならもっと早く国民に詳細を報道すべきところを本当に国会で審議され強行採決直前などという段階になってようやく秘密法の報道に本腰を入れるというお粗末さ。(特に地上波のテレビ)国民の大半がこれがとんでもない法律であることに気づいたのは本当に強行採決の直前である。これはメデイアとしての責任を果たしたとは到底いえない、この法案についてはすべて4ヶ月前からマスコミは存在を知っていたはずで国会提出の前にもっと問題点を論じるべきであったはずだ。「知る権利」などを論じる以前に自分たちの報道機関としての怠慢さを恥じろといいたい。(中には明らかに「アリバイ作り」といわれても仕方のないほど衆議院で可決後に声明を発表した放送局もあった

 この「順序が逆」という話ですが、今回が初めてではありません。多くの法案について、可決成立の後に「政府公報」などを使って「ご存知ですか制度改正?」などのキャンペーンをやって「周知徹底」とか「懸念払拭」に努めるというのは、日本の政府の「常道」です。どうやら国会というのは、内容が国民に周知されてもいないし、懸念も消えていない段階で決定する機関のようにも思えます。

 近年では、そのために大混乱を生じた法律もあります。後期高齢者医療制度がそれで、小泉改革の一環として成立させた時点ではロクな説明もせずにおいて、施行が近づくと「ご存知ですか?」キャンペーンを張った結果、75歳以上の高齢者には「不利益変更部分がある」ことが判明して批判の大合唱になったわけです。


この点は本当にこの国の民主主義のおかしな形。本来なら国会審議の前にそれを国民に知らせるべきなのを殆ど「事後承諾」で、あとになってとんでもない内容の改正だったとわかるパターンが多い。今回の特定秘密保護法案」もまさに同様で実際に施行されたらとんでもないことが次々に起こる可能性が高い。多くの専門家によって多くの欠陥が指摘されているにも関わらず(上図)、それに関する議論らしい議論も行わないままの強行採決→成立。これは間違いなく将来に禍根を残し、とんでもないことがおきる。何度もいうように今のままの法律ならば日本に本来なら存在しないはずの政治犯がこの法律によって出てしまう可能性がある。そして出てしまってからでは遅いのである。

但し国民サイドにも問題がある。ネット,ブログの記事やtwitter等では秘密法についてはだいぶ前から話題になっているにも関わらず、大半の国民はそれらに対して無関心な人間が多かった。地上波のテレビが本腰をあげて報道して始めてこれがとんでもない法律と知った人間がおそらく大半ではないだろうか?
■秘密保全法 市民「マスコミが言わないから分からない
http://tanakaryusaku.jp/2013/10/0008090

これは日本国民の情報に対する受身の姿勢、自分から積極的に情報を探そうという国民がまだ少ない(そもそも「知ろう」と考える国民が少ない)といわれても仕方のないことであろう。今回の秘密保護法は政府に国民のそんな体質をつけこまれたという言い方もできる。

これでは、主権者である国民の意見、すなわち「世論」が政治に反映されていないことになります。民主主義が機能していないのです。そればかりか、決定された政策や法律の「正当性」が脆弱なままで放置されることになります。一体どうしてこういうことが起きるのでしょうか?

 そこには大きく根深い問題があります。それは世論が漠然と持っている感情論や印象論が、政治や行政の直面している現実と著しく乖離しているということです。

日本の政治のシステム自体が全く民意を反映できていないシステムになっている。そしてマスコミを始め、政治の決定システム自体が根本的におかしい、という意味でこの記事は確かに的を得ている。

その意味でこの記者は次のような興味深い提言を行っている。

そんな中、一つのヒントになりそうなのが、今回の法案可決劇に派生した形で起きた「みんなの党」の空中分解です。これは、一見すると渡辺喜美氏と江田憲司氏の確執の結果、つまりは個人的なヒューマンドラマに過ぎないように見えます。

ですが、深層にはもっと別の構造的な問題があると思うのです。それは党議拘束の無意味さ」ということです。政権や所属政党が民意を無視して法案を可決してしまい、その後で「周知徹底、懸念払拭」をやると言っても、個々の議員の事情は複雑です。

 特に衆議院小選挙区の選出議員は、極めて特定の地域の有権者の代表として国会に来ているわけで、民意を完全に無視していては次の選挙が危なくなるわけです。今回の「みんなの党」瓦解事件の背景にあるメカニズムは、他の要素も含めた複雑なもののようですが、こうした切り口から理解するとスッキリするように思うのです。

 この際、首班指名と予算案以外は党議拘束を外して、議員が「選挙区の民意を代表する」ようにすれば、政治と世論の乖離には一定の歯止めが出来るのではないでしょうか?

最後の部分は非常に興味深い提言である。私も政治家、議員のいう党議拘束という縛りには傍から見て違和感を感じていた。個々の政策に関しは各議員さまざまな事情があるはずで、それを党議拘束という制約で各議員の主義主張まで歪めざるを得ない、というのはいかがなものか、と思う。また党議拘束は結果として今回の政府与党の強行採決のような「数の暴力」につながる可能性が高くなる。まずそういう悪弊を政治の慣習から外す、というのも1つの方法だろう。

もっとも今の政治家がそれに聞く耳を持つとは思えないが...

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