日本郵政がん保険参入凍結TPPで-これでもTPPは「自由貿易」なのか
さて私はTPPの「ラチェット規定」を始めとする多くの取り決めにはあまりにも問題が多すぎて、この内容での参加は日本にとって危険どころか日本社会そのものの崩壊の危険性すらはらんでいることを書いた。
それでも一方では大手だろうがどこだろうが各国「対等の条件」(実際にはTPPは加盟国対等な条件でもなんでもないが)でなら一定の可能性もないわけではないということも理解はしていたつもりだ。
だがこの記事はそんな幻想をいとも簡単に吹き飛ばしてしまった。
■日本郵政、がん保険参入凍結 TPPで米国の懸念に配慮(朝日新聞)
http://www.asahi.com/business/update/0509/TKY201205080818.html
日本郵政は傘下のかんぽ生命保険が「がん保険」に当面参入しない方針を決めた。環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉に日本が参加するかどうかの協議で、米国が難色を示していることに配慮した。
日本郵政の斎藤次郎社長が8日、朝日新聞のインタビューで明らかにした。斎藤社長は「政府のTPP交渉の邪魔をしようという考えはない」と話し、がん保険への参入を当面は凍結する考えを示した。いつまで凍結するかは明らかにしなかった。
日本郵政はかんぽ生命の事業を広げるため、日本生命保険と一緒にがん保険の開発に取り組んでいる。4月に成立した郵政民営化見直し法では、日本郵政が100%持つかんぽ生命の株式を半分以上売るなどすれば、国の認可を受けなくても新しい事業を始められるようになる(保険業法による国の認可は必要)。
ところが、日本郵政の株式は政府が100%持っている。見直し法では、政府は株式を売っても3分の1超は持ち続けることになっていて、政府の関与は強いままだ。
このため、米国の保険業界は「政府の後ろ盾がある『かんぽ生命』が民間会社と競争するのは不平等だ」と主張する。日本国内のがん保険は米アメリカンファミリー生命保険(アフラック)が約7割を占め、かんぽ生命が入ってくるのをおそれているからだ。
本来「自由貿易」である以上どこががん保険をやったところで問題ないはずである。政府が100%の株を持とうが持つまいがそんなことは関係ない。これは日本郵政の存在自体が「非関税障壁」といっているのに等しい。
結局TPPとは貿易をすべてアメリカのいいなりにさせる条約であることが証明されたのではないか?
これの一体どこが「自由貿易」推進になるの誰か説明して欲しい。これでもTPPが日本を救うというのか?推進論者たちよ、
あえていわせてもらうが、この件を持ってTPPが自由貿易で日本を救うなどとあくまで主張するなら経団連のトップや推進派の経済学者たちの頭の中を疑わざるを得ない。まあ野田が救いようのないバカであるのは知っているけど...
これは「日本郵政が勝手に判断したこと」などという者がいるようだが政府の圧力なしにこのような結論など出すはずがなかろう。これをみるとTPPの本質は少しも「自由貿易」ではないことを証明している。
1つだけはっきりいえるのはいわゆる「グローバリスト」(私にいわせれば「エセグローバリスト」)といわれる連中と新自由主義や市場原理主義を標榜する経済学者は絶対に信用してはならない、ということ。今回の日本郵政の決定はそれを証明しているといわざるを得ない。