龍馬伝最終回ー全体の感想と暗殺犯について
さて龍馬伝の最終回、終わりましたね。
まあ何度もいいますが歴史ドラマはフィクションであって歴史のシミュレーションではないので、どこどこか実際の史実と違うとか、司馬遼の「竜馬が行く」とここが違うからおかしい、とか飽きもせずいっている人がいますが、そういうことは置いておいて、純粋にドラマとしては私は年間を通じてかなり楽しむことができました。特に感情的な面での盛り上げ方は本当によくできていたと思います。
ただ惜しむらくは、土佐の上士とか徳川慶喜等を水戸黄門的な悪役的に描くような脚本については、指摘する人がいましたが、確かにちょっと苦言を呈したいですね。そこの部分がなければ脚本にかなり深みが出ましたね。特に後藤象二郎や徳川慶喜をああいった悪玉的に描きすぎるとその後の彼らの行動の整合性にやや?がつきますので、
盛り上げ方はすごくよかっただけにそこの部分が本当に残念です。
あと歴史観についてこのブログでもコメントがありましたが、確かに江戸時代を必要以上に悪く書いていることに異論がでましたし、士農工商の身分で実際には士以外は非常にゆるかった等の指摘がありました。しかし龍馬伝のテーマは中世以来から続いていた武家による封建制度から近代国家に生まれ変わるためのお膳立てを水面下でやった、部分を描かなければなりませんので、そういう内容になるのはある程度仕方ないかもしれません。
さて、ここで謎といわれる龍馬の暗殺犯ですが龍馬伝では市川亀治郎扮する京都見廻組の今井信郎(あと佐々木只三郎ー鳥羽伏見の戦いで戦死)が「実行犯」とされ、これが定説になっていますが本当にところはわかっていません。
現在ある説として
・京都見廻組ー定説
一応一般では「定説」と言われている説です。
これは、龍馬暗殺の罪で捕まったとされる大石鍬次郎が一旦は新撰組の犯行と認めたものの、翌年その言をひるがえし「見廻組の今井某らの仕業と聞いている」と述べた事からによるものです。
実際、こののち今井らも犯行を認めて、刑を受けているんですが、ここでちょっと不自然なことがあります。といいますのはこの今井信郎なる人物、維新後まもなく赦免されている点です。これが龍馬暗殺に新政府(明治政府)が何らかの形で関与しているのでは、という疑念をもたれているわけです。・・・・△
・新撰組
暗殺ときけばすぐに新撰組と思いつきますが、実際現場に残されていた刀の鞘を高台寺党(新撰組から別れた伊東一派)の篠原泰之進らが「これは原田左之助のものだ」と証言した事と、残されていた下駄も、「新撰組のものだ」という証言があったためですが、もし犯人が新撰組だとすると不自然な点があります。
まず、当の隊長の近藤勇がそれを否定しています。新撰組からすれば坂本龍馬暗殺は寧ろ功を誇るはずですが、それがない。それに暗殺集団である新撰組がそのような証拠を残すというのはやはり不自然である、それを考えますとこの可能性は低いと思います。・・・・×
・薩摩藩説
これもかなり有力な説になっています。確かに大政奉還によって振り上げられた手を下ろす事無く維新を迎えてしまいました。実際龍馬の行為を「余計なことをした」と思ったことは事実かもしれません。
但し私はこれも疑問に思っています。実は龍馬暗殺当時の薩摩藩は倒幕を目指していた西郷や大久保ら薩摩藩首脳部は、「藩主の島津忠義の上京」と「薩摩藩兵の京都出兵」という重要な二つの問題(課題)を抱えており、その状況は極めて切迫していたため、龍馬の暗殺などという諸事に関わるほどの余裕は持ってはいなかったという説もあり、私もそれに同意します。
http://www.page.sannet.ne.jp/ytsubu/bakumatsu16.htm
よく薩摩藩と言うと、藩論がいつも統一され、倒幕に向けて一致団結して動いたかのようなイメージを持たれますが、実際の藩内は分裂状態にあり、しかも西郷や大久保らの倒幕派の方がややもすれば少数派であったという事実を正確に理解する必要があると思います。また、実際に出兵の判断を下す島津久光自身もまた、この段階では未だ倒幕のための出兵に関しては懐疑的な考えを持っていたと思われます。(もともと久光は佐幕派です)
というわけで・・・・×
・土佐藩説
後藤象二郎が大政奉還、船中八策その他の手柄を独り占めにしたいがため、という説ですがこれも当時の状況をみると疑問符です。といいますのも既に大政奉還はなったものの薩摩、長州も倒幕の動きを緩めておらず余談を許さない状況だったわけで、まだ龍馬を「用済み」と考える段階とは思えないことです。しかし龍馬の動きは薩摩藩や長州藩も把握してあり、今さら後藤象二郎が手柄を1人占めしようとしたところで、あまり意味がないと思われます。
よって・・・・×
・紀州藩説
いろは丸事件での賠償問題で龍馬をうらんでいたということですが、実際には龍馬の暗殺とほぼ同時に賠償金は支払われており、(注:史実では岩崎弥太郎が紀州藩から賠償金を受け取っている間に龍馬は暗殺されています)これも・・・・×
その他幕府説、長崎奉行説などたくさんありますが、これを見ると結局
「わかりません」というしかないです(笑)。
まあとにかく私個人は一年間楽しませていただきました。
スタッフと出演者の皆さん。 お疲れ様でした。