KyojiOhnoのブログ

作曲家、編曲家、ピアニストそして製作会社の経営者ですが、ここでは音楽以外の社会一般のことの雑感について書きます。

龍馬伝といわれている「うそ」について

久々に大河ドラマ龍馬伝」の話です。

何度もいいますが昨年の「天地人」と比べますとドラマとしては格段によくできているとは思っていますが、ネットの中のいわゆる「歴史オタ」(失礼! (笑)) の人には史実と違う点がある、嘘がある、という意見もあるようです。

以前私は
■歴史ドラマの「捏造」はどこまで許されるか
http://d.hatena.ne.jp/KyojiOhno/20100214

という記事をここに書きました。確かに歴史ドラマは実在の人物や歴史的事実を題材にはしていますが、所詮その歴史事実が起きている時(例えば幕末)に生存して現代に生きている人などいないわけです。そのため歴史作家が調べた題材を元に想像力を働かせるしかありません。つまり大河ドラマを始めとする歴史ドラマは「歴史のシミュレーション」ではなく「歴史を背景としたドラマ」ーフィクションであるわけです。

ここを取り違えると話があさっての方向に行ってしまいます。

そのため細かい部分を見ればドラマの進行の中で史実と違う面が多少なりとも出てくるのはいたしかたないことです。なぜならこれは「歴史のシミュレーション」ではなく実在の人物を扱っているとはいえ、フィクションなわけですから。

その意味では司馬遼太郎大仏次郎ほどの大歴史作家でも、歴史小説の中で全て史実通りに書いている、というのはおそらくないと思います。以前浅田次郎さんの講演会で浅田さんは歴史学者は歴史事実を見るが歴史小説家は歴史の中の人間を見る」と云っておられましたが、その「人間」を見て想像力を働かせ、魅力あるドラマに仕立て上げたのが歴史小説であり、ドラマなわけです。

但しフィクションだから何でもしていいわけではありません。いくら大河ドラマがフィクションといっても登場人物が「現代風」の言葉使いをしたり史実的にありえない天地人のように直江兼続千姫を救った等www)ことを描いてはいけません。

つまり私なりの判断材料として先ほどのページでも書きましたが

1.描いている歴史の歴史的背景、社会情勢や事情をよく読み取っているか

2.歴史の根本的事実は抑えているか

この2点を抑えているかどうか、が重要です。

例えば龍馬伝を見て、土佐藩の上士と下士の差別的状況、黒船が来たときの日本人に与えたインパクトと幕府の狼狽ぶり、長年の太平の世で武士の殆どは鎧を質に出していた等は歴史的背景、社会情勢をよく反映しています。天地人にはこういう要素が全くといっていいほどありませんでした。

また歴史的事実の根本というのは歴史的大事件の時期、年号等は間違えずにドラマに反映する、という点でありこれは当たり前のことです。しかし、細かい部分に関してはどうでしょうか?

例えば龍馬伝で「嘘とされている」事実として龍馬が江戸に初めて行った時に桂小五郎に会った、そして吉田松陰に会ったとされているドラマ展開があります。桂小五郎に関しては同時期江戸にいたのは間違いないので「龍馬と桂小五郎が絶対に会っていない」と断言することはできません。 ただ、可能性は低いとはいえますけどね。それに仮にこれが嘘だったとしても歴史の根本的事実には何ら影響がありません。 まあ吉田松陰は確かに取って付けた感は否めませんし、ドラマの進行上何の意味があったのかちょっと疑問ですが...(吉田松陰が密航しようとしたのは浦賀で江戸から40キロ以上は離れていますしね)

そしてそもそも今回の「語り」役をやっている岩崎弥太郎ですが、そもそも岩崎弥太郎が住んでいたのは同じ土佐でも現在の高知県安芸市で、龍馬が住んでいる高知県高知市とは距離的に離れているようです。ですから2人が幼馴染であった可能性はないといえます。ですからそもそも物語りの設定自体が最初から史実と違う(笑) 確かにその通りではありますが、後海援隊で行動をともにする時は、かなり龍馬をライバル視していたのはどうも事実のようですし、坂本龍馬を世の中に広く知らしめるようになった「土陽新聞」の新聞記者、坂崎紫瀾『汗血千里の駒(かんけつせんりのこま)』の情報源は岩崎弥太郎であることも事実なので、岩崎が「語り役」をやっていること自体は「歴史の根本」に大きく影響を与えるものではありません。

まあ「龍馬伝のうそ」を懸念する人たちは、史実と違う面を史実だと思ったらどうするのか、という風に考えているようで、その懸念はわからないではありません。日本人はメデイアリテラシーの意識が非常に低く(たぶん世界でも最低レベルといっていいでしょう)、何でもマスメデイアの情報(NHKならなおさら、ですが)を鵜呑みにする傾向が強いのも事実です。しかしそこは「ドラマ」であり「フィクション」であるー「歴史のシミュレーションではない」という意識を視聴者自体が持つようにすべきでしょう。

ちなみに来週いよいよ龍馬が生涯、師と仰ぐ勝海舟との出会いシーンがありますが、龍馬伝公式サイトによると、わざと史実と違う描き方をしているようです。大河ドラマの鈴木CPが自らそう書いています。また「歴史オタ」君たちが騒ぎそうですね。(笑)

http://www9.nhk.or.jp/ryomaden/

ドラマとして作る側が歴史の根本事実さえおさえていて、あとはドラマとして面白ければいいんです。「天地人」は歴史の根本事実すらいい加減に描いて、なおかつドラマとしては最高につまらないものでした。残念ながらNHK大河ドラマの歴史に汚点を残したといわれても仕方ないでしょう。

確かに龍馬伝では吉田東洋の描き方、武市半平太の描き方に多少異論は個人的にはありますが、まあドラマとしては面白くしてあるので、まあそう目くじらを立てずに楽しんでみたらどうでしょうかね?