KyojiOhnoのブログ

作曲家、編曲家、ピアニストそして製作会社の経営者ですが、ここでは音楽以外の社会一般のことの雑感について書きます。

mixiの著作権、人格権の規約改訂に伴う騒動にふれ

すでにIT関係のニュースでご存じの方も多いだろう。会員2000万人を超すという日本最大のSNSサイト mixiが4月1日の規約改定の内容が元で会員の中で大騒ぎになっている。

ことの発端は新規約の第十八条

「第18条 日記等の情報の使用許諾等

1 本サービスを利用してユーザーが日記等の情報を投稿する場合には、ユーザーは弊社に対して、当該日記等の情報を日本の国内外において無償かつ非独占的に使用する権利(複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変等を行うこと)を許諾するものとします。
2 ユーザーは、弊社に対して著作者人格権を行使しないものとします。」
これを素直に読むとmixiに掲載された日記、著作物、その他のコンテンツを会員に断りなくmixiが自由に販売できたりすることが法的に可能になると読める。つまりmixiにコンテンツをアップするということは自動的に権利を放棄することと同じことになる。尚、これは過去のユーザーの全てのコンテンツも対象になるという。 また第二条の「人格権を行使しない」という条項は権利に少し詳しい人間であれば人格権は譲渡されないという著作権の基本概念を無視した内容で、常識的に云って到底容認できない内容である。
更に問題はこの十八条だけではない。十八条では「全てのコンテンツは会員ではなくmixiが権利を持つ」と書いておきながら十九条は

1.弊社は、ユーザーの通信や活動に関与しません。万一ユーザー間の紛争があった場合でも、当該ユーザー間で解決するものとし、弊社はその責任を負いません。

2 弊社は、本サービスの内容の追加、変更、又は本サービスの中断、終了によって生じたいかなる損害についても、一切責任を負いません。アクセス過多、その他予期せぬ要因で表示速度の低下や障害等が生じた場合も同様とします。
        −  以下  略  −」
つまり平たく言えば「自分の日記は自分で責任でその内容はmixiは責任を負いません、ただし、面白い日記は勝手にmixiは出版や転売等を行いますよ。」という意味に受け取れるわけである。

更にたたみかけるように

第21条 本利用規約及びその他の利用規約等の有効性

1 本利用規約及びその他の利用規約等の規定の一部が法令に基づいて無効と判断されても、本利用規約及びその他の利用規約等のその他の規定は有効とします。
2 利用規約等の規定の一部があるユーザーとの関係で無効とされ、又は取り消された場合でも、利用規約等はその他のユーザーとの関係では有効とします。

つまり国内法でたとえ違法と判断されてもmixi内では合法とみなしますよ。つまりmixiは国内法の法令順守は行いませんよ、といっているに等しい。

常識的にいってこの文章をそのまま読めば「これはムチャクチャだ」という話になり、それが会員内での大騒動に発展した。

これに対してmixi側は「追記」と題して次のような弁明を行った。まず最初に

上記の条項につきましては、ユーザーのみなさまが『mixi』のサービス内で作成した日記、著作物等の情報について、従来どおりユーザー自身が権利を有することに変わりはありません。
上記の条項につきましては、ユーザーのみなさまが『mixi』のサービス内で作成した日記、著作物等の情報について、従来どおりユーザー自身が権利を有することに変わりはありません。 」

また

「「また、ユーザーのみなさまが投稿した日記等の情報(公開している>自主作成の映像やイラスト、テキスト等)の使用に関しては、当社>の以下対応について同意いただくもので、当社が無断で使用するこ>とではありません。

それならそもそも新規約の十八条をもうけること自体がおかしい 。もしユーザーの権利を認めるのであればそもそもこの条文はどう考えても不要であると同時にこの弁明は上記の新規約第十八条に矛盾するのは小学生でもわかるだろう。なにやら国会の政治家や官僚の答弁を聞いているようだ。

そしてmixiは今回の規約改正の主旨を以下のように説明している。

1.投稿された日記等の情報が、当社のサーバーに格納する際、データ形式や容量が改変されること。

2.アクセス数が多い日記等の情報については、データを複製して複数のサーバーに格納すること。

3.日記等の情報が他のユーザーによって閲覧される場合、当社のサーバーから国内外に存在するmixiユーザー(閲覧者)に向けて送信されること

が目的だという。だがそのためにわざわざ十八条、二十一条などをもうけるだろうか?
上記が本当に目的だとしたらを「データのバックアップのためにお客様のデータを複製して複数のサーバーに格納します。但しこの複製データーがユーザーに無断で第三者に譲渡されることはありません」と断りを書けば済む話だろう。 わざわざこんな条文をもうけなければならない理由がわからない。この規定は著作権、人格権についてよく理解した人間が書いているとは到底思えない。

さて、今回のできごとでmixiの株価は大幅に下がり、現在も下降中のようだ。さすがにmixiの本部も危機感を感じたのかユーザーの著作権を尊重する言質を規約に盛り込むように改正をする意向を示したが、どういう内容になるかまだわからない。改正内容によってはまた大騒ぎになる可能性もある。

今回、あくまで噂だがmixi内の三浦和義氏の日記(既に閲覧不可)を、mixiが引用したいがため、 というのが真の目的という話があるが、その噂が仮に本当だとしても釈然としない。なぜなら今回のことで明らかなようにこの規約を公使することによって、次のようなリスクが生じるからである。

1.ユーザーの利用度の低下
 →PV数の減少による、広告媒体としての価値の低下→収益の低下
2.プレミアム(有料)会員の減少
 →収益の低下
3.企業の信用度の低下や上記の事柄の結果としての株価の低下
 →収益の低下

1.のユーザー利用度は今回の騒動で大きくなったかもしれないが、2と3は現実に起こっている事実である。今回の騒動でmixiが受けたダメージは測り知れない。

実はこういう騒動は今回が始めてではない。投稿サイトの著作権に関する、サービス運営者とユーザー間のトラブルは、過去に何度も繰り返されてきた。01年にはジオシティーズ(現Yahoo!ジオシティーズ)で、04年にはgoo ブログやlivedoor Blogで、06年にはドリコムブログでそれぞれ、著作権に関する新規約がユーザーの反発を呼び、規約改定を迫られた。過去こうした前例があるにもかかわらず、もし今回mixiにユーザーの著作権を尊重する意図が本当にあったとするならば、なぜ今回のように強引な規約改定に踏み切り、十分な説明もないまま押し切ろうとするのか。理解できない。

ネットの世界は放送に比べて著作権や肖像権、人格権に対する意識が低いというのは前から指摘されていたことだが、草創期はある程度仕方ないとしてもこれだけ社会の中で重要なメデイアになった時点でも、権利に対する意識が充分にネットの世界で育っていないというのは問題だ。

あえていわせていただこう。

IT関係者は実際に「モノ」や「コンテンツ」とかを0から作った経験がない人間が多い。デジタルの世界で、コピーペーストで育った世代は、人の著作物でも勝手に使いまわすのが当たり前という感覚になるため、権利に対する意識が薄くなってしまうのは否めない。そしてその「業界基準」を勝手に解釈して、「新しい市場の開拓」という変な理屈で自分たちの全ての行動を正当化する。またその行動に反対する人間を「守旧派、保守派」と決め付け自分たちこそが正義だ、という態度の人間が少なくないのも事実。

また人によっては「もの作り」というものを旧態依然の業種と決め付け、その業に携わる人に対して敬意や尊重を払わないIT関係者も少なくない。はっきりいえば製造業やソフトメーカー、コンテンツメーカーをなめている人間が多い。

だが本当にネットの世界の発展を願い人類に対する恩恵を広めようとするなら著作権をはじめとする権利に対する意識をIT関係の業種の方はもう少し持ってもらいたい。少なくとも著作権、人格権、肖像権というものをきちんと勉強して欲しいということは声を大にしていいたい。そうした上でどうしても著作権に関する規約改訂が必要になったとしても、それは慎重にー少なくとも今回のように一方的でなく、なぜそれが必要なのかをユーザーが納得いくまで説明を尽くした上でー行う必要があるだろう。そうした意識がIT関係者、経営者の中でないと「IT革命」というものは絵に描いたモチで終わってしまう可能性もあると思う。